1930年代も半ばを過ぎるとヨーロッパの政治情勢は緊迫を極め、どこの国でも軍事力の拡大が進んでいました
とりわけ戦車はその代表例で、多くの軍隊で「次の戦争」に備えた新型車両の開発・購入・配備など戦力化が急がれ、試行錯誤も多くあったものですが
中欧の技術大国、チェコスロヴァキア共和国に於いては1935年に本格的な国産戦車としてシュコダ社製LTvz35戦車を採用しました。
LTvz35戦車は当初より対戦車戦闘用として37ミリ砲を備え、同時代の車輌としては充分な戦闘能力を持っていましたが、
新機軸である空気圧式変速機等、走行性能には難ありと判定され、直ちに新型戦車の開発が求められました。
チェコスロヴァキア政府がここまで陸軍力の整備を急いだのには当然のことながら隣国ドイツの、
あのちょびヒゲ野郎の、
殺る気まんまんな姿勢にあり、ご近所さんにキケンなひとが住んでると大変ですねーなどと同情を禁じ得ません。
幸いにしてチェコスロヴァキアの工業界はこの要請に応え、CKD社製新型戦車、LTvz38戦車の採用が決まった・・・
あたりで突然国が無くなっちゃいました。QNK!!(急にナチスがキター)
1938年、ミュンヘン会議での決定を受けてチェコスロヴァキア共和国はズデーテン地方をドイツに割譲、更には雪崩を打つように国家その物が解体され
旧チェコ地域はドイツ領、旧スロヴァキア地域も保護国化されたのです。
どーでもいいですが(いや良くないですが)ミュンヘン会議ってチェコスロヴァキアは参加してないんですよ?ふぅははーほんと欧州は地獄だぜえ(棒読み)
だもんで拡大化の一途を辿っていたナチス・ドイツ陸軍は労せずして第一級の新型戦闘車輌を、開発企業・工場・はたらくひとたち全部乗せで手に入れてしまいました。
そりゃまー、いろいろと調子にも乗る罠。
というわけでドイツ軍戦車、Pz.Kpfw 38(t )こと38(t)戦車を作ってみました。(t)ってのは重量表記ではなくドイツ語のtschechisch(チェコ製)の頭文字であってつまり
まーその、先進めますね(汗)
今回はじめて香港の模型メーカー、トライスター社の製品を組んでみました。外国メーカーのキットは説明書に誤記があったり、パーツの合いが悪かったりすることもしばしばですが
こちらに関しては全く問題なく、基本的にさくさく組み立てられます。
車体はこんな感じです。ごくごく普通、常識的な形をしているんですが車幅ギリギリまで広くとられた砲塔リングに注意、でしょうか。
E/F型は二次大戦開戦後、1940年に作られた装甲強化型ですが、基本構造はチェコ時代とさほど変わらず、
そもそも懸架装置以外の武装や基本的な形状など、主だった要素は35(t)軽戦車ことLTvz35戦車の時代にほぼ完成されています。
実戦無しでそれっていうのは単に技術が優れていただけではなく、設計センスが秀でてたってことなのかな?
このキットは別売りの車内インテリアセットを組み込めるようにあらかじめ設計されているので、素のままでも内部構造があるていど再現されています。
というわけで主砲と車体機銃など。どちらもスライド金型で銃口開口済み、完全可動、モールド繊細とよいことずくめだ。
砲塔機銃が同軸配置ではない独立配架なところがよくわかるかと。
チェコの機関銃は第一次世界大戦後、全世界的にベストセラーとなった優秀な兵器であり、
日中戦争で中国国民党軍の「無故障機関銃」と恐れられたZB26軽機関銃は後に日本軍にほぼ模倣され、
同様の流れを汲む英軍のブレン軽機関銃に至っては1980年代(!)まで使用されていたらしひ。
細部は金属製エッチングパーツで再現されてます。
主砲横、照準器上に取り付けられた「雨樋」がなんかチャーミングw
エンジングリルはちと曲げが甘い(汗)
車外装備品取り付けベルトは曲げが甘すぎてアップの撮影に耐えられない(汗汗)
足回りはこんな具合、なんとポリキャップレスで完全可動だ。
大型転輪は38(t)戦車の特徴で如何にも高速性能に優れていそう、だもんで希に「クリスティー式サスペンションを」などと大間違いなこと書かれたりしますが
ご覧の通りごく普通の板バネ式懸架装置なのです。ホイールとゴム輪が別パーツ化されてるんで、絶対に塗りがハミ出さないぞ。
その前に感極まったパーツを。
ご丁寧に小型の上部転輪も分割されてんですが何とゴム部に
「CONTINENTAL」の
文字が!刻まれている!!
スゲー(゚Д゚)
塗り塗り。前回のII号戦車と同じグレー2種をスプレーし、あと今回は汚しを強めにパステルで入れました。
砲塔・車体ともに渡って打たれているリベットを強調しようと。
デカールもこの時点で。「第7装甲師団第25戦車連隊 1942年ロシア」の525号車でカルトグラフ社製デカールはなるほど発色も良いし曲面にも馴染みます。
話は変わりますが自分自身昔から38(t)戦車は好きな車輌でした。
1/35スケールでは古〜いイタレリのキットとかちょいと組めそうもない東欧メーカーのしかプラモがなかったんで、数年前トライスターから出たときは嬉しかったですね。
でもちょっと、手を出しかねていた。何故かというと連結式キャタピラが面倒くさそうだったから(^^;
しばらく経って雑誌記事などでよくよく調べてみたところ、このキットのキャタピラパーツは連結タイプの ハ メ コ ミ 式 で、パチパチやりゃあオッケイだと!マジ!?
ってんで探したんですが店頭在庫全然無くて焦る焦る。海外メーカー製品はまだまだ安定供給できないのかなぁ・・・
件のキャタピラ。片側93枚ですってそれを一枚一枚繋げていったら絶対に
「いま、何枚目?」
などとタイムショックの嫌がらせ問題みたいな羽目に陥るので10枚×9セット+3枚を用意、容易にハマる!繋げられる!!そしてェェェェつ!!!
「外れやすいので流し込み接着剤による補強が必要でしょう」
雑誌記事に書かれていた通りにぽろぽろ外れる(´・ω・`)
ぽろぽろ、あれれ、ぽろぽろ、あれれ、ぽろぽろ、あれれれれれ、あ、
・・・ついカッとなってタミヤのマーダーIII用ベルト式キャタピラを巻いた。38(t)車体に適合すれば何でも良かった。今では反省していない。
良いんです、私は我慢弱い男なのです。
天秤座だけどなー
そして完成こんな具合。
小さな車体に大きめの砲塔、更に大きな転輪で・・・「ドミニオン」のポナパルトっぽいんだ、どことなく。
かくして祖国チェコスロヴァキア防衛のためにはひとつの役にも立たなかった38(t)戦車は35(t)戦車と共にドイツ戦車部隊の根幹となり、
初期電撃戦では数の揃わぬIII号戦車に十分以上に匹敵する主力戦車となりました。
特にロンメル将軍指揮下の第7装甲師団はチェコ式装備の装甲師団であり、対仏戦に於いてムーズ川を真っ先に渡河した快速師団としても知られています。
しかし軽戦車って大砲が小さいから動かしてもあんまり絵にならないんだよな・・・
書き忘れてましたが車体前面についてる輪っか付きの変な棒w は車体機銃の直接照準器だったりする。
銃手はちゃんといるんですけど、操縦手でも撃てるように成ってたんですって。
いやしかし、なんで実戦未経験でそんな便利な物を装備していたのだ流石だなチェコ人。
そしてII号戦車と並べてみる。
並べるとわかるのですが車格はそんなに変わりませんね。
ガワとして余裕を持たせた、冗長性の高い大型車輌を作っておけば、後々まで十分発展が可能であるとドイツ人が何時気がついたのか定かではありませんが
小さな車体に出来る限りの重武装を施した38(t)戦車は独ソ戦開始後には即座に性能不足な車輌に成り下がり
二線級の車輌となってしまいました。
別アングルから。
車長用のキューポラ、その脇の回転式ペリスコープなど38(t)戦車には実戦的な装備品がいくつも備わっています。
一方II号戦車は被弾時に車内を跳び回って危害を及ぼすリベットを廃した電気溶接構造。
どちらも長所を備えていて、以降のドイツ軍装甲戦闘車輌の発展に寄与していったことが伺えます。
しっかし並べてみるとわかるんですがね、コイツらでT−34やKVと渡り合えってぇのは無茶ですね〜。