「シャーマン・ファイアフライ」

 


さて年末年始でそそくさと作った48ファイアフライです。あんまり変わったこともしてませんが、さくさくカタチになるって大事ですよね。

 

M4シャーマン戦車といえば第二次世界大戦の戦車ではなんとなく中ほどの位置づけで雑魚扱いされることも多い戦車です。

しかしながらやはりこれは傑作戦車で、なんら新規の技術を用いずに従来からある要素を手堅くまとめ、

必要とされたときに必要とされるだけの性能を持って必要な量を通り越して他国にいくらでも供給出来るほど生産されました。

出現当時シャーマンはドイツ軍の主力戦車3号、4号戦車には十分拮抗し、アフリカ戦役の末期に遭遇したタイガー戦車は確かにこれを凌駕していましたが

独立重戦車大隊で僅かな数が運用されているタイガーはさほど重大な脅威とは受けとられませんでした。

とはいえ75ミリ主砲ではタイガーを打ち抜けないのは事実、欧州侵攻に合わせて米軍は駆逐戦車用に開発された76ミリ砲を搭載した改良型のシャーマンを配備しました。

 

ノルマンディー上陸作戦後、連合軍戦車部隊に現実的な脅威となって立ちはだかったのはドイツ軍の新型戦車パンサーでした。

当初この巨大な戦車はタイガー同様独立重戦車大隊で限定的に運用される「重戦車」と目されていたのですが

実際には一般戦車連隊に大量配備される「中戦車」であり、東部戦線の戦訓からドイツ軍は戦車開発のシーソーゲームをひとつ繰り上げていたのです。

米軍の76ミリ砲シャーマンでは傾斜装甲に守られたパンサーを打ち抜くことは出来ず、パンサーの長砲身75ミリ砲はタイガーの88ミリ砲以上の貫徹力で

易々とシャーマンを破壊することが出来ました。この時期アメリカ軍にはパンサーに対抗できる陸戦兵器が存在しませんでした。

しかし、イギリス軍には

「ファイアフライ(蛍)」と名付けられた恐るべき戦闘兵器が在ったのです。

 

いきなり組み上がりの状態で申し訳ない(汗)車体その物は以前組んだM10駆逐戦車と大差ないので慣れで出来上がります。

ファイアフライというのはアメリカ製シャーマン戦車にイギリス製17ポンド対戦車砲を搭載しただけの車輌なのですが、

元来機動性や操作性では格段に優れた戦車であったシャーマンはただそれだけのことによって非常に強力な戦車駆逐車輌となりました。

 

キャタピラ取り付け、基本塗装終了。

今回はドイツ空軍用のダークグリーンを使ってみました。おなじミドリに見えても米軍とイギリス軍じゃ随分違う色・・・らしい

ちなみにファイアフライには大別して3つの形式がありますが、タミヤがキット化したのはM4(英名シャーマンMk.I)をベースにしたシャーマンICファイアフライ。

普段ならここでスミ入れ→汚しルートですが今回はちともうひと山。

そもそも年末忙しいときに新製品でもなんでもないコイツを作ろうと思い立ったかとゆーと、

アーマーモデリング誌1月号に載ってた1945年5月、オランダで撮影されたカナダ軍第5機甲師団所属の車輌がウルトラかっちょよかったからです。

どの辺がかっちょよいかと言えば、

 

この鎧武者のようにまとった増加装甲代わりのキャタピラ!

実車の写真はまさしく百戦錬磨のベテランに見えたので、コイツも十戦錬磨ぐらいにはしてみます・・・

シャーマンの装甲厚はドイツ軍の対戦車砲弾には抗堪し得ないもので、だからこのような向上策を計りもするのですが

実際の所至近距離での高初速砲弾の撃ち合いは一撃で片が付く「真昼の決闘」のような様相を呈し

発射速度の速いファイアフライはこの点でもドイツ戦車に比べてアドバンテージを保持していました。

 

で、完成です。

砲塔側面は長い一枚板のパーツを切って力業と遠赤外線加熱(よーするにコタツだ)で曲げてみたんですが微妙に浮き上がり感が否めない。

17ポンド砲は砲弾直径こそ米軍の76ミリ砲とほぼ同じでしたが薬莢は遙かに大きく弾頭は遙かに重く、

遙かに強大な威力を持つ対戦車砲でした。

 

側面から見ると17ポンド砲の長砲身がよくわかると思います。

ノルマンディー戦に投入された当初、ドイツ軍はこの「長鼻」を最優先攻撃目標に指定したので

急遽イギリス軍は前下半部に迷彩塗装を施して通常型シャーマンに見えるような偽装を行ったりもしました。

 

 

イギリス軍は車載無線機を砲塔後部に置いていたのですが、17ポンド砲の巨大な砲尾を収めるために外部へ移設。

装甲ボックスで防護すると共に砲身に対するカウンター・ウェイトの働きをします。

 

キャタピラで完全に隠れちゃいましたがファイアフライは車体前部機銃を撤去しています。

このスペースはやはり巨大な17ポンド砲弾を収納する弾薬庫に用いられ、乗員数は4名となります。

当初ファイアフライは1個小隊に付き一輌の割合で配備されていました。

通常は小隊の後方に位置し、強敵が現れるや呼ばれて駆けつける「用心棒の先生」みたいな役割で、

陣地攻撃、近接戦闘などは必要なしと判断されたようです。

 

今回はキャタピラの「谷」部に溜まった泥汚れと、逆に「山」部には残らないという差を明瞭に。

の割りには車体底面とかは手抜きで、どうも経験が蓄積されないよな。

 

別構図でもう一枚。

 

日本では蛍と言えば清涼な岸辺を飛び交う典雅な虫とされていますが、ヨーロッパの蛍は獰猛な肉食昆虫で

差詰めスズメバチのような生態を持つ甲虫なのだそうです。

ドイツ戦車兵のトップエースの一人、武装親衛隊のミヒャエル・ビットマン大尉はノルマンディーで戦死しているのですが、

その際に彼の乗車タイガー「007」号車を屠ったのはこのファイアフライです。

まさしくこの蛍は虎や豹を打ち倒すほどに恐るべき存在だったのです。

 

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