II 号戦車L型、通称ルクス(山猫)はドイツ軍が第二次世界大戦に投入した偵察用軽戦車です。
そもそも II 号戦車というものは I 号戦車とともにドイツ軍が戦間期に開発した、あくまで訓練用の車体であり、
ポーランド戦を皮切りに大戦初期に活躍したのは、どちらかといえば目的外の用途と言えます。
以前作った II 号戦車F型(タミヤ)。
F型は戦訓から装甲等が強化されたいわば実戦モデルですが
やはり性能不足は否めず、アフリカ戦以降は急速に第一線から退きます。
小型軽量で偵察に使用される新型戦車の開発はドイツ軍内でいくつかのプランが平行して進められ、
なかでも高速性能に重点をおいたモデルのひとつがこのルクス軽戦車であり、
戦時中に開発された新世代軽戦車としてはドイツ軍唯一の正式採用車輌です。
(対照的に重装甲タイプの I 号戦車F型は陸軍では不採用となり、警察部隊に半ば無理矢理押し付けられたりしています)
さて、作りましょう。
発売から時間が空いちゃったんですが今回、タスカ初の戦車プラモとして話題を呼んだ「1/35ルクス(後期型)」を組んでみました。
特に話題を呼んだのはこのトーションバー・サスペンションの再現でしょう。
実車同様の「捻り」機構で稼働します。
あんまり動かすと折れそうなんですけどね(^^;)
なにせはじめて作るメーカーの製品ですから、組み立ては説明書の順番どおりに進めていきます。
交差配置の転輪は同時期に開発されたパンサーやタイガーと同じ設計思想のもの。
接地圧の低下によいそうですが、整備製は悪いとかで。
尚、この段階で足回りは基本塗装をやっておく。
今回はいつもと違って全部アクリルガッシュの筆塗りでやってみました。
何事もなにかひとつは新しいことをやりたいものですね。
大体の組み立てが済んだところ。
側面のいわゆるスター・アンテナが目を惹きます。
機甲部隊の目となり耳となるルクスには、それを伝える大型の無線機が搭載されているのです。
四角い車体はタイガー I 重戦車をディフオルメしたようで可愛いですね。
同じ構図で申し訳ないですが基本塗装終了の図。
反対側を撮らなかったのは実はコレ買ってからしばらく積んで置いときまして、
・・・一部パーツが歪んでしまった(泣)
ちなみに写真では上手く飛んでくれてますが
・・・実は筆ムラだらけだったりする(泣泣)
ま、まあ何事もなにか新しいことはやりたいもので、それが上手に行くかどうかとは別問題で(しどろもどろ)
塗装は「ネープルスイエロー」単色でやったんですがちょっと明るすぎました。
ホントはちゃんと調色してダークなイエロー作らなきゃいけないんですが・・・
代わりに汚しを派手に入れる。
最後はヤッツケ仕事になるのは・・・いつもと同じで(爆)
さて一番最初のF型の写真と比べてみれば一目瞭然ですが、同じ「二号戦車」といっても
共通するところはひとつもありません、まったくの別物なのです。
実際、こんな風には汚れないものなんですがまあ印象ってことでひとつ。
唯一それまでの II 号戦車と共通するのは主砲の20ミリ機関砲。その割りには砲塔は大きめで、
実はルクスは総生産数800輌が計画され、初期ロットの100輌まではとりあえず20ミリ砲を搭載し、以降は50ミリ戦車砲に強化される予定でした。
高速性を発揮する機関室。最高時速60kmで走る走る。
ドイツ軍には鋼鉄製の巨大な豹や虎、はたまた虎の王様までがひしめいていたのですが、
中には小さくてもがんばる山猫戦車がいたのだにゃあ。
50ミリ砲搭載の強化型、はたまた車体全般を改設計した「レオパルト」など偵察軽戦車の開発計画は順当に進められる予定でした。
でも、戦争が順当に進まなかったので、
結局それらは全部断ち消え、
ルクスは初期生産100輌のみをもってひっそり開発を終えました。
同時期にアメリカ軍が配備していた軽戦車「M5」と並べてみました。
ルクス以降の偵察用軽戦車がすべてキャンセルされたのは
生産に手間がかかる「戦車」が限定的な「偵察」任務にしか用いられない不効率の為であり、
ドイツ軍はこの任務にハーフトラックなどの装甲車を多用することとなります。
米軍のM5軽戦車はドイツ軍の主力戦車相手にはまったくの力不足だったのですが、
それらの「軽い」偵察車輌には絶大な威力を発揮したと言うことです。
正面から見るとルクスが車高を抑えて「見つからない」ような印象であるのに対して、
M5はむしろ「見える」ための戦車だと思えなくもないです。
火力も装甲厚もM5が優越していて、両者が戦場で遭遇したらルクスは分が悪かったでしょうね。
「俺のタイガーを山猫とすり替えたヤツは誰だ!」
ミヒャエル・ヴィットマン(談)